かつてもここで書いたことがあるんだけれど、僕のキーボード設定は、「カナ入力」である。
おそらく90%以上の人が、「ローマ字入力」ではないかと思う。だから、珍しがられる。いや、(共有PCの設定変更などでは)煙たがられる。
そんなこともあって、ためしにと、ローマ字入力で原稿を書いてみたのである。その対象は宝田明氏に朗読をお願いする「ザ・ヒストリー・オブ・ライフ」という初回プレミアムCDの原稿。使う脳の部分が違うのでは、と期待して昨日の朝まで数日間、ローマ字モードの自分と奮闘していた。
ま、今回ローマ字入力に挑戦した理由は、いつのまにかモードが切り替わっていたから。ま、神様の思し召しだから、ここらで両刀使いになるのもいいか、と思ってそのまま続けていたんだが・・・・。
ちなみにカナ入力だとストロークが半分で済むから、入力が速い、というのがかつてローマ字入力から移行した理由である。
************************************
きれいに印字された原稿とともにいざスタジオにはいる。緊張した雰囲気の中で、リハーサルが始まる。
舞台俳優さん独特のヨミがはじまり、となりのコンソールルームのスピーカーからそのつぶやく声が流れてくる。
「あれ?」
「斉藤君、今回は、文体がちょっと違うね」
はっきりとはおっしゃらないけれど、スタジオ入ると、そんな雰囲気が氏の後頭部からひしひしと伝わってくる。たしかに、声で読み上げると、いつもお願いしている宝田節とはちょっと違う。あわてて、修正をいれる。
自分で書いた台本なのに、あちこちで「なんでだろう?」と思う気持ちが行き来する。宝田明氏ほどの大御所の俳優さんにこれだけ修正を現場でいれるのは、なかなか勇気がいることだ。
ふとローマ字入力では文が冗長になる傾向が多いことに気付く。もともと英文タイプをならっていた人間だから、ローマ字入力がただ不慣れなだから、とは思えないのだ・・。
今回の原稿は、文章というよりも「詩の朗読」つまり「音」である。頭の中で浮かんだフレーズと入力が一致すると、すらすらと言葉が流れてゆく。ローマ字入力だと、頭で浮かんだフレーズをいったん子音と母音に分解してから入力するから、脳の作業が1ステップ余計となる。思考が0.02秒ほど瞬断する。それが書いているときの印象。
英文を書く時は、まったくストレスがない理由もこれで説明がつく。つまり英文は、「分解」しないので、すらすらとタイプできる。ちなみにいまは、いつものカナモードで書いている。
この、「たった1プロセス」が多くなることが、執筆を億劫にさせ、入力を遅くし、そして文章がへたくそとなる理由ではないか、と思ったのである。すくなくとも僕の場合はね。
むろん人間の脳は偉大だから、慣れてしまえばどうということのないことだろう。そして、おそらく若き文筆家の多くが、ローマ字で創作をしているのだろうから、こう一方的にきめつけてしまうわけにはいかない。しかし、この三日間の実験で、確実に僕はそう思ったのであるよ。
音を音のままタイプすることで流暢に文章が書ける、というのが本当ならば、若いスタッフ諸君もいっそカナ入力にしてみてはどうか? そうすることですこしは楽になれる気がするのである。余計なおせっかいではあるにせよ・・。
近々に、その名演技をここで、紹介することにしよう。全部を公開すると、予約特典プレミアムの意味がなくなってしまうが、ま、このブログを読んでいる人は買ってくれているに違いないから。しかも、どうせ予約なんかしない人たちばかりだから・・。(いまから音の編集だす・・・)