斉藤由多加 (Yoot Saito)
さいとうゆたか
 

東京生まれ。ゲームクリエーター/株式会社ビバリウム。ゲーム作品の代表作は「シーマン~禁断のペット」「大玉」「ザ・タワー」など。ゲーム作品の受賞歴としては、文化庁メディア芸術祭で特別賞、米国ソフトウェア出版協会でCodies賞、Game Developers' Awardsなど。 TheTowerDS が08年6月26日に発売予定 
 使用カメラ/ライカM8 愛用レンズNoktilux 50mm F1.2など

株式会社ビバリウムのサイトはすこしリニュアルしてwww.vivarium.jpに移動しました。
フォトアルバム

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サザンの休業について思う

ストーンズを筆頭に、メジャーなロックバンドが社会に与える影響力は、文化面だけじゃなく経済的な側面においても、下手な上場企業よりはるかに大きいように見える。その動向がレコード会社やプロダクションの株価にもここまで大きく影響するわけだし。

たとえば今回のサザン騒動は、関係各社が予定している収益におそらく多大な影響を与えていることはだれの目から見てもわかる。いいかえるとサザンというバンドはちょっとした企業体に匹敵するわけで、もしバンドに株式制度がとりいれられたならば、30年間、高収益を継続した優良企業だ。

考えてみれば、30年もサービスが継続する企業なんてなかなかない。
だけれど、悲しいかなバンドは会社にはなれない。煮詰まったりメンバーが脱退したらあえなく営業中止という不安定さが「バンド」という組織体のアキレスの踵である。公開するためになによりも重要なのは「特定の個人に依存しないサービス」なのだから。

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しかし視点をかえて桑田氏を中小企業の社長として見るならば、たった5人で、いや、実質一人で、よくもここまでの規模の産業を支えてきたな、とそのエネルギーには敬服する。

数千円の日産スタジアムの4日間の公演のパンフレットが完売だったそうだが、その売り上げだけでもちょっとしたベストセラーの比ではない。こういう付随の産業をすべて支えているのが桑田社長の頭脳、となると、「そりゃたいへんだったろうに、」となる。むろん、多くのスタッフがそれを支えてきたのだろうが、肝心な部分はいやがうえでも彼個人の感性に全面依存していたにちがいないわけだから。

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オリンピックを見ていて改めて痛感する「個人の力」。
大きな十字架をせおっている人にとっては、その重圧がいちばんの仇となる。「みなさんのおかげで」といえばいうだけ、その人に過度の負荷があったことを感じてとれる。桑田のコンサートのMCのはしばしに推測してとることができるいろいろな確執。そこに向けられる、フアンである数十万人、数百万という人の巨大な力すら所詮「応援」にしかなれなかったという事実。

個人の力というのはとてつもない牽引力ななりえるけれど、同時に、何人たれども肩代わりすることができないという「もろさ」、や「せつなさ」が常にあることをも感じてしまったこの夏だったのである。

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iPhoneの使い勝手について

iPhoneを使い始めて約一か月。
今日は、その使い勝手について、自分の印象をつづってみることにした。

まずiPodTouchと比較して圧倒されるのは、wifiに依存しない「接続」。Wifiがあればそちら優先。でも出先でも路上でもシームレスにつながる便利さは、t感動ですらある。

こういうのは、慣れてしまえば当たり前のことになってしまうのだろうね。ちょうど携帯電話をはじめて使用したときの感動に似ている。

iPhoneは、「電話」という商品として売られているが、そしてまた、mp3マシンという商品カテゴリーに区分されているが、僕は実はどちらにも使っていない。理由はバッテリー持続時間。僕にとっては完全なモバイルマシンである。

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さて、じゃwilcomのesなど従来のモバイルマシンとどこがちがうのか? それは、捨てるものは徹底して捨てることによるわかりやすさ、である。  過去のしがらみをばっさりと切り捨てたiPhoneは、第三世代のGUIをもつOSのようにみえる。(事実そうなのかもしれない)

ジョブスがアップルに返り咲いたときに、「自宅とオフィスで仕事環境が共通化できるまではマックはつかわない」と発言してきたことを思い出した。
.macは(=いまはモバイルMeという名称になったが)、iPhoneにターゲットを合わせて随分と進化したが、たしかに「自宅とオフィス」の仕事環境がずいぶんと近づいたように感じる。

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●モバイルMEとの威力

昔の秘書が丹念にOutlookで入力してくれた住所録。後任との引き継ぎの関係で、ここ2年更新がストップしたままだった。
「夏も過ぎたし、そろそろクリスマスカードのことを考えないとならんぞ・・」そう思い、前の秘書のパソコンのデータを自分のWindowsマシンにコピーした。すると驚いたことに、その住所録情報はモバイルMeのサーバーを通じて、自動的に手元のiPhoneにしっかりと(文字化けしたり姓名が不自然に逆転することなく)転送されているのである。

広告の文句どおり、手元のiPodで、ノート型macで、そしてWIndowsアドレス帳で、更新をかけると、すべてに即座に反映されているではないか。これはすごいことだ。どうすごいかを端的に表現するとね、バッテリーが短命なせいでぼくはいま2台のiPhoneをもっているのだけれど、一台がバッテリー切れになったらさ、もう一台をそのままもって外出しても、そこにある連絡先や予定表データはまるで一緒、という状況になるわけだ。パソコンはいうにおよばず、ね。このシームレスが第一のおどろき。

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●検索インターフェイスとしてのGPS地図

GoogleEarthの偉大さはすでに議論しつくされているが、GPSを搭載した同類の"MAP"を路上で使える便利さもiPhoneで初めて体感したのも今日のこと。

「港区 サイゼリア」といれてMAPで検索すると、ずらりと地図上にサイゼリアの位置が表示される。そのひとつをタップすると住所や電話番号が出てくる。さらにそれをタップすると、そのまま電話がサイゼリアの三田店につながる、というわけです。車中から「おたく様は駐車場完備ですか?」と、なる。

そう、モバイルユーザーにとって地図は、いまは立派な情報検索インターフェイスなのである。
PCのウェブ上の電話番号をクリックするとSkypeでつながる、というのもおみごとだったけど、地図上の店舗に、モバイル機からそのまま電話接続される便利さというのは、すごいなぁ・・。びっくりした。このシームレスが第二のおどろき。

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△電波を使用するキャリアは地域によって自動的に切り替わり表示

●海外でもそのままモバイルが使えるということ

第三のシームレスのおどろきは、そのまま海外にいったとき。
たぶんiPhoneが本当の力を発揮するのは、不慣れな海外にもっていった時ではないかと思う。携帯電話も海外で使える時代なのはわかっていたんだけど、上記のモバイル環境がそのまま出張先の路上でも稼働するのは助かった。自分がいるアメリカ合衆国内の場所がMAPにプロットされ、移動するから道に迷うこともない。ホテルの予約も上記の「サイゼリア」と同じ方法でできるわけ。海外旅行にはかならず一台iPhoneを、というのは大げさだろうか?

難点があるとすれば、バッテリーの持続時間。日本の携帯電話の要領でいると、とんでもないしっぺ返しをくらう。とくに、渡航時間中は、電源を「完全にオフ」にしておかないと空港で泣きを見るので注意。

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さて、これらの考察から、ひとつ得たアドバイスとアイデア
日本で契約した携帯を海外ローミングで通話すると、料金はご存じのとおりとてつもなく高い。僕も、たがだか1週間で6万円近くかかった。米国内の市内通話も国際電話扱いだからね。

だから、出張の多い人は、たとえばアメリカ契約のiPhoneを一台購入しても、じゅうぶん元がとれる気がするわけ。なにせ、連絡先やメールなどのアドレス帳は(モバイルMeのおかげで)コピーする手間がゼロなのだから。

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北方領土の日

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今朝の朝日新聞の一面に、こんな広告が掲載されている。

声を結集させるのはいいが、結集させたところで日本はどういう戦略で自国領土(!)を取り戻す腹積もりなのか、それが知りたいわけである。それがあいまいなのに声だけ集めよう、なんていわれてもねぇ・・・なんというか、外交というのは代表権を委ねた上での大切な仕事なのだから、その被委任者(=政治家と官僚)はきちんとカードを使って仕事をしてもらいたいものだ。スコアが曖昧なゲームに人は集まりませんよ。

そもそも日本が終戦記念日としている1945年8月15日。しかしこの日以降も戦争は続いていたというのが国際法的な解釈なわけで、じゃ決着したのはいつか、となると、連合軍と日本の間でサンフランシスコ講和条約が締結されたとき、ということになる。

このサンフランシスコ講和条約に、ソ連はサインしていないので、この曖昧な状態は続いている。言い方を変えると、ソ連との戦争はまだ続いている、という言い方もできる。

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戦争が決着していないまま、戦争放棄を憲法で唱ってしまった日本は、こげついた残債の取り決めをしないまま「債権放棄」をした銀行のようなものだ。そうわかったら、借主は借金を返すわけがない。そんな状態で、国内の声だけ集めようとしても、進展があるとは思えないんだな。

本当に自分の領土だ、と主張するならば、自衛権の行使ってのが日本にもある。それにのっとって堂々と北方に自衛隊を出動すればいいじゃないか。奪還すればいいじゃないか。ロシアはグルジアで死人を出しながら今日もそれをやってる国なわけで。

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そんなこんなで六本木のロシア大使館あたりを通りかかったら、あたりは右翼団体の街宣車が集まっていて、警察も同じ数かそれ以上が待機していて、昼ごろからずいぶん物々しい雰囲気だった。暑い中たいへんなエネルギーだ。

その様を見たくて僕は徒歩でロシア大使館正門の前を通ろうとしたのだけど、「はい、一般通行人がとおりますよぉっ! 道をあけて!」と、まるでテレビのロケみたいに警察官の一人が叫ぶ。いやいや通行人じゃなくて、参加したいんですが、と思いながら灼熱の中、高らかに読み上げられた抗議文を聞こうと近寄ると、「はい、一般の人は近寄らないで」だと。

「なんで見ちゃいけないの?」と聞いたら、警察官は僕を睨みつけたまま黙ってしまったのでそのまま写真を撮らせてもらった。

しかし今日の朝刊の一面に、「声を結集しよう」と広告を出しておきながら、「一般の人は近寄らないで」」はないだろ!!だったら新聞広告なんて出すなよ。

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△週末なので大使館は閉館中。読み上げた抗議文を大使館のポストに・・

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△どうせなら、中国みたいに海外のプレスを日本政府も秘かに呼べばいいのに。国際世論へのデモンストレーションというのはそういうものだ

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△うっかり北方への声を結集したら、逆に捕まっちゃいそうな雰囲気。

先々月に韓国を訪れたら、「米国牛肉の輸入反対」のデモ行進が延々と続いていた。日本人は世界一しらけている国民だから、デモ行進に参加するなんて熱い風習はもはやない。なに考えているかよくわからない人ばかりの選挙に、投票にいこうなんて気持ちもわかない。

結局、日本政府は、北方領土の奪還にむけて、市民たちを結集させたいのか?それとも地元警察の手がら稼ぎの餌食にさせたいのか?

意味深な新聞広告を出すだけ出して、「じゃ、どうしてほしんだよ!?」という疑問を抱えたまま、「しかたないからスポーツジムでもいくか」となってしまった土曜日である。