新しく発表されたMacBookの新しさは「一枚のアルミ板から削り出された、継ぎ目のないなめらかな筺体」だそうだ。
この技術は「航空宇宙産業でミッションクリティカルな宇宙船部品の製造にも使われているCNC(コンピュータ数値制御)装置を使って、一枚のアルミニウムからユニボディを削り出す技法」だという。
これって、ローレックスのオイスター構造(防水)とか、ライカのボディとか、いわゆる熟年男性が好きそうな、アナログ工業芸術にありがちなフレーズだ。
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筺体製造の手法を売りにしたパソコンなんて、(ぼくの知る限り)前代未聞だ。そもそもこんなセールスポイントがIT機器のセールストークになるのか?と疑問を抱く人も多いだろう。僕もマーケッターだったらそう思うに違いない。しかしなぜかユーザーとしてこのセールストークに過敏に反応してしまった。
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実は、いま企画の題材にしているものが、どれもこの系統である。
旋盤とか、鋳物、とか、重工業とか、研磨とか、そのあたりの言葉にぞくぞくくる自分がいる。
先日、トヨタ自動車の創業物語のDVD(トヨタ織機がエンジンを作り始めた時期のこと)をもらってきて見たんだけど、そこでいちばんゾクゾクきたフレーズ、それは「理屈どおりには動かない」というフレーズだった・・・この一言にアナログの醍醐味、言い換えると現実と理論の違いがすべて集約されているようにおもう。ま、つまり男チックなロマンの象徴、とでもいうのかな。
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物体が共鳴し、醸し出すさまざまな音。
物質が持つフィルター効果を利用してとどれだけひとつの音を純粋に取り出せるか・・・・ギター職人たちが木をあれこれと削りだした試行錯誤の末、いまのギターサウンドがある。
だからギターは、エレキになっても「木」が命だったりするわけで、いまだにシンセサイザーでシミュレートできない複雑系だ。
「削り出す」という言葉には、だからシンセサイザーが純粋なサインカーブの信号音を加工して出す音とはまったく逆の、たくさんのノイズと倍音を含んだようなアナログイズムの響きがある。
その体感が、これからのブームになってくるような予感がするんだな・・・なんとなく。
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