斉藤由多加 (Yoot Saito)
さいとうゆたか
 

東京生まれ。ゲームクリエーター/株式会社ビバリウム。ゲーム作品の代表作は「シーマン~禁断のペット」「大玉」「ザ・タワー」など。ゲーム作品の受賞歴としては、文化庁メディア芸術祭で特別賞、米国ソフトウェア出版協会でCodies賞、Game Developers' Awardsなど。 TheTowerDS が08年6月26日に発売予定 
 使用カメラ/ライカM8 愛用レンズNoktilux 50mm F1.2など

株式会社ビバリウムのサイトはすこしリニュアルしてwww.vivarium.jpに移動しました。
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人間牧場

人間何才になっても、熱が出るとしんどい。
今日はぜったいに出勤不可能と思われたけど、どうしても外せない来客案件が午後に二つ。
午後11時前に帰宅してくすりをカバカバと飲み熱い風呂に入る。震えが止まらないまま床に入り、すこし落ち着いて熱を計ったら39度熱があった。ということはオフィスにいた時は40度近かったに違いない。帰宅途中にはタクシーの中でブルブルと悪寒がし、目からは涙がポロポロというありさま、

心配した取引先のYさんは家まで送ってくれました。ありがとうございました。すこし落ち着いてきました

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さて今回の猛烈な発熱で、「風邪というのは人から感染してなる都市病であって、多少の寒さなどでかかるものではない」、という僕の持論は、脆くも崩れ去ったのであります。
というのもこの風邪はまちがえなく、酔って半袖Tシャツのままソファーで寝てしまった土曜日に起因しているのだから。


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風邪の特効薬を発明したらノーベル賞確定という話を聞いたことがあるし、つまり風邪ってのはまったくあなどれない病気です。現代人にもっとも身近な病気でありながら実はまるでよくわかっていないともいえます。風邪とストレスとUFOってのは、いつの時代にも正体不明のまま絶滅しないのであります。

しかし風邪ってなんですか?
たぶん僕たち人類の免疫力が下がると頭をもたげてくる菌による肉体汚染の総称のことなのでしょうかね?
こんなに猛烈に熱が出てきて、しかも服もろくに着ていないままの縄文時代のたて穴式や、すきま風が吹きいる平安時代の平民の家だったらとっくに死んでいるにちがいない。風呂を沸かすのに半日かかっていた江戸時代の木造家屋に身を置いていたとしてもも、生き延びる自信はない。
その当時の人は免疫力が高くてその程度では風邪などにはならなかったのでしょうが、たぶん僕だったら死んでいる。


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医術は進化し、生活レベルも高くなりました。でもこの世から病気はまだまだ消えない。そして人類は確実に弱体化しています。

実は「人間牧場」って名のシミュレーションゲームを作ってみたいと昔から思っていて、とくにこの名前が最高だと思っているのですが笑、内容はウィルスの洗礼で淘汰されながら種を進化させるというもの。
黒死病のような病気が一気に都市に蔓延したとき、まるでバブルがはじけるように死に絶える、あるいは逆に生き残れる人類は何パーセントなのだろうか?なんてことにとても興味がありまして。

家庭用ゲーム機の規定では難しく、タイミングは僕の一生のうちには来ないかもしれないけれど。


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出所しました

「もう二度と戻ってくるんじゃないぞ」

荷物を受け取りながら、笑顔で看守にそういって見送られるのかな、などと想像していましたが、意外にあっけない退院でした。支払いも機械でした。見送りはおろか、門番の看守がギーと開いてくれる大きな扉もない。

同フロアの患者さんは、まぁ暇っていや暇ですから、病院内はWBC一色なわけ。迎えに来てくれた妻の車で優勝のドサクサに紛れ、逃げるように(?)シャバに出たのでありました。映画みたいなシーンとは程遠く、味気ないっていや味気ない。

じゃシャバでうまいもんがたらふく食えるかというとそういうわけではなく、むしろこれからも制限の厳しい日々はつづくわけで、むしろ病院食が恋しくなりゃしないか、心配です。

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病院は9時消灯10時就寝。ま、まもっていたわけじゃないんだけど起床は嫌が上でも6時でしたから、これからしばらくは堅気な人生をおくらせていただきやす。

来週からは、通院型の禁煙コースにチャレンジするわけで、ま、どうせ長続きしないでしょうが、「さわやかで健康的なおじさん」を目指してやってみようかなと思っております。

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カーテン越しのスポーツバー

ただいま8回表、サムライジャパンの攻撃。
カーテンで仕切られた各ベッドからは、おじさん声で「うぉー」「あー」といった歓声があがり、 スポーツバーのような奇妙な一体感が病室を支配しています。
そう、ここは病室という名の「長屋」なのであります。

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△写真からは感じられないかもしれませんが、いま各ベッドから拍手がわき上がっています。左手前が僕のベッド、その向こうは、なぜかセガの人。お世話になりました。笑

ただ、なぜかワンセグで見ているおじさんが一人だけいるようで、各ベッド備え付けのテレビよりも3秒ほど、このおじさんのリアクションが一人だけ遅い。言い換えると、このおじさんは3秒だけ僕らの過去にいる。

もしジャパンが優勝したら、僕は3秒も早くその歴史的事実を知るのかな・・・なんて考えながら、時差のある一体感を噛み締めています。カーテンで仕切られたスポーツバーならではの不思議な空間となっています。

さぁ、サムライジャパン、あと二回、2点差を守りきれるか?

この試合が終わり次第、今日、僕は、退院します。

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成人病予備軍の人へ「入院のススメ

毎日の食事が、実に味気ないので、逆に、シュークリーム一個食べただけで「こんなにおいしいのぉ!?」と感動してしまう機会が増えたのであります。

ちなみに、僕のここ一週間の食事はどんなものかといいますと、朝食はこんな感じです。

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左下のカップの中にあるのはコーヒーではなくお茶です。

さてランチはどんなものかといいますと、こんな感じ。

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で、夕食はどうか?ですが、こんな感じ↓
この日はうなぎでした。

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「たったこんだけ?」
という人もいるでしょうし、
「こんなに?」という人もいるでしょうが、これが一日1700Kcalの食事です。
入院なもんだから、それ以外の食事は、いっさい摂れないし、摂らない。
毎日腹を空かしているうちに、だんだん感じなくなってしまいました。
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入院という言葉だけだと違和感があるので、医者が随行してくれる合宿といったほうがわかりやすいかもしれない。
僕の業界には、飽食な人が多いけれど、そしてまた、ついつい日々をそのまま不健康に過ごしている人が多いけれど、「入院」というのは、いいかもしれない。空腹と粗食の時間の中に身を置いて、朝ラジオ体操なるものを近くの公園でやり、一日の時間の流れを同じ場所で感じながら・・・・・体が少しだけ蘇ってきたような気がしている今日この頃です。

血糖値の高い人、あるいは、その他成人病の気が若くしてある人、ファッションで「禅寺にでも籠ってみるか」を口癖にしている人、入院というのもある意味厳しくていいぞ!!!
なんで厳しいかというと、これが「保健治療」だから。笑

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タレント本のススメ

入院の退屈しのぎといえば読書。入院は先週の日曜日から予定されていたのだけど、その日のサンデージャポンで紹介されていたタレント本を3冊すべて、そそくさと買って入院した。
一冊ははるな愛ちゃんの「素晴らしき、この人生」、一冊は椿姫彩菜ちゃんの「わたし男子校出身です」、そしてもう一冊は元レッドウォーリアーズのボーカルの「なりさがり」。

いい年の男がタレント本なんて読んでんの?と思うでしょうが、読み比べるとこれがなかなかおもしろいのです。
愛ちゃんと彩菜ちゃんの本は、タレント本というよりもニューハーフ苦労物語。キャラの違う二人ですが、その生い立ちや苦労はとても似ている。性同一性障害と自己への違和感、人間不信、親の不理解、自殺願望、家出、男性との出会いと裏切り、ニューハーフママとの出会い、大手術の決心、女性になって親との再会、そしていまはたくさんの人に支えられて幸せです、と、どちらもちょっとした演歌調な自伝といった感じ。それに対してレッドウォーリアーズの「なりさがり」という本。流れとしては(ニューハーフである事を除いて)この二人と意外に似ていて、「酒とセックスとロック」に満ちた人生が「Oh,Yeah, ロックだぜ」口調で連綿と綴られてる。元光Genjiの諸星クンの本に匹敵するほど笑った。よくよく読んでいくうちに、もしかしたらこの三人の中で一番不幸なのではないか?と思わせる彼の人生は、支離滅裂すぎて表現不能なのですが、とても純粋な人なんだろうなぁ・・。自伝に苦労をこれだけした、という演歌調が多い中、人生をロック調で通すとこうなってゆくんだろうなと、ある意味感動したのです。しかもこのおっさん、年は僕と同じなんだけど、表紙が、たるみ気味の上半身裸に十字架を下げた「ロッカー」の出で立ち(爆)。

1836円もするので新刊としての購入としてオススメするのはすこし気が引けるが、ブックオフあたりで買うならいいかも。同世代の人にオススメします。

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すこしバカにしたような表現で紹介してるかもしれませんが、実はタレント本というのは(このブログを読んでいる人の中には読む人少ないでしょうが)、書店でちょっと立ち寄ってみる事を強くお勧めする次第です。その理由はくわしくあとでお話ししますが、題材が創作でなく「生身の人生」だからです。

そもそもタレント本を読むようになったのは最近で、浅草キッドの水道橋博士のタレント本の書評集に触発されてからです。日経エンターテイメントの連載だったそうですが、そこで彼が取り上げている本は、高倉健から光Genjiまでかなり読みました。

たとえば若手男性タレント本にかならず出てくる「矢沢永ちゃん」の表現の違いを比べるだけでもかなり笑えるし、ファンの女の子やアイドルの食い方の「ほんとにそんなことあるんだ」的な違いを比べるも良し。

ほとんどの読者はごく普通の人生を送っているわけだけど、結局タレントだって、そういうスペシャルな世界に身を置けるのはごく数年、という人間の共通法則がある中で、彼らがどう輝き続けようとしているか?どう延命しようとするか?を読み取るのが楽しむコツです。 タレント本ですから登場人物の真実を明かす訳に行かないという事情もあるしドラマティックに描きたいというタレントの見栄もあるから単品で読むと印象は微妙なのだけど、複数のタレント本を読み比べる事で、そこには非日常の世界で起きるイベントに対処しようとする、「人生」という題材への一人の人間の取り組みが見えてくるわけで、その意味で入院というイベントにはもってこいの本だと思うわけです。

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日本の村田、世界のムラタ

いまテレビで一位二位決定の韓国戦をやっているんですが、なんと日本の4番、村田が足を痛めて退場してしまった。次は出られないのではないかと心配。
この村田という選手、年齢は28といいますが、サムライジャパンのユニフォームを「どてら」のように着こなしてしまう貫禄がある。独特のオーラが他の選手を圧倒していて、なんともその存在感が好きでした。

ああいう図々しいタイプって、江夏や清原と似て日本では間違えなく嫌われるキャラだけど、ここぞというときにガツンとやってくれる図太さがたまらない。

歌舞伎町とか夜の盛り場を闊歩している時は白いエナメルの靴を履いてて欲しいなぁ、とか、バッターボクッスに立ったときも尻のポケットから札束の入ったワニ革の財布が顔をのぞかせてて欲しいなぁ、などとこの人には期待してしまうわけ。

僕は普段は野球にまったく興味がないのだけれど、世界戦となると話は別、出場する選手は有名無名とわず国中から選び抜かれた日本男児の逸材なわけで、おっさんの総合カタログを見ているようで想像を膨らませてしまうのであります。

こういう僕は、当然のことながら朝青龍も好きなわけでして、「男を味わう」という視点でのスポーツは、なかなか楽しいのであります。実はすごく繊細な性格だったりするのでしょうかね。清原もそうですし、実は外見と内面はまったく無関係だったりしますからね。

しかし、いや、だからこそ、それでも観客に取り囲まれたここ一発の瞬間に、異常なまでの勝負強さを発揮できる人なわけでしょうから、日本チーム、いま5-2で勝ちそうですし、これからも世界の舞台で日本男児のの勝負っぷりをぶちかまし続けてほしいのであります。

村田よ、20代とは思えぬその体型をかばいきれずとも、自重で足を故障するという醜態をさらそうとも、世界に日本のオヤジの勝負強さを見せてやってくれ!! この場に至って、ねこひろしやダンディー坂野になってくれるなよ!!

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先生、エレベーターは団子状態です

どこの病院のエレベーターも、連動せず一基一基がバラバラに動いていることがほとんどで、したがって来るのがすごく遅い。
だから見舞いで訪れるたびに「もうすこしなんとかすればいいのに」といつも思ってきました。
今回入院している病院もかなりフラストレーティブで、4台(3+1)のエレベーターが連動することもなく、各階止まりながら降りてくる。

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△三台のうち右端のものが乗客用。

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△さらに、その右に、もう一台の乗客用。

しかし実際に入院して病院を内部から見ていると、いくつかわかることがあります。
なぜ病院のエレベーターがオフィスやデパートと違ってバラバラかというと、寝台専用エレベーターがあるからです。寝台は専用にしないと、いつまでたっても乗れないことになりますから。

が、しかし、実際に観察していると、実態が「寝台専用ではなく寝台優先」になっていることがわかります。患者さんたちは待ってるのが辛いから「専用」とあっても乗れたらとっとと乗っちゃうんですね。そもそも病院のスタッフがそうしているから、なし崩し的にそうなってしまう。

そのうち他の患者さんたちはみんな、病院のエレベーターが遅い事を知っているから、「乗れるかもしれない」と期待して、専用の有無をとわず、すべてのボタンを押してしまうのです。
なもんだから、乗れても乗れなくても、エレベーターは全部「各階止まり」となるわけで、最悪の団子状態になっている。専用指定していることが仇となってしまっているわけです。

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話はかわって、病院って、施設内のすべてのサービス度が社会主義国っぽいというか、臥薪嘗胆的なものばかり。よしにつけ悪しきに付け商売っけがない。だからエレベーターに限らず、「待たさせる事」に平気です。病院は商業テナントとちがってとにかくなにもかもが「いずれ呼びますからそこで待ってて」スタイルなんです。

ま、「当院は予算もドクターの注意も、すべて病気に対して向かってますから」ということでしょうが、エレベーター待ちの姿勢もなかなかつらいという患者さんも多いのではないかな。

「病人が送り込まれる施設」というようなネガティブな名前は誰がつけたのでしょうかね。
病院が一般人にとってもうすこし居心地のいい施設になってくれれば、僕ももうすこし居心地がいいだけでなく、働き盛り世代の成人病の早期発見も実現するのではないかな、とも思う訳でして。

 

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先生、ちゃんと導いてくださいっ

会議室で入院患者がオリエンテーションを受けているときの事です。 10人ほどの「同期入院生」を集めて看護士の人が説明をしていたのですが、話している事があまりにもわからない。で、そのうち会場がざわつき始めた。女性の看護士は、とにかくそれらしく説明しようと必死なのですが、いかんせん説明が極端にヘタで、それはもう同情するくらい痛々しい。年配のオヤジ患者(糖尿コースに多い)がダミ声で逆質問するわけですが、そのうちに会議室全体がだんだんパニック(すこし大げさ表現です)になってきてしまったのであります 笑 

病院の先生や看護士スタッフというのは国家資格を持った専門家です。
だけど、彼らは専門家以上に「教師」あるいは「通訳」でもある。いやなけれはならない。
だから、こういう人は先生と呼ばれるのでしょうが、そこには説明して一般人を「導いてくれる」という期待がある。

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△先生、ここは「導」という字じゃないっす!

僕の兄は歯科医ですが、インターン時代に、実験台の患者に何も知らせぬまま前歯数本をさし歯にしてしまい、訴えられそうになりました。その患者が身内だったので事なきを得ていますが、兄はそれ以来学者の道を選び、患者は「専門家はもっと説明しろよ」をテーマに活動しています。(要するに僕のことです)

ま、そんなことはどうでもいいとして、説明する能力、が、社会ではとても大切で、でもその能力はあまり重要視されていない。
これはゲーム開発でもおなじで、たとえばプログラマーというのは日本語と機械語をとりもつ通訳でなければならない。だから人に耳を貸さないプログラマーというのは、患者に無断で治療を進めてしまう医者みたいなもんだと自社を反省するわけです。

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入院手続き

入院手続きって、簡単なんですね。
ホテルのようにクレジットカードの提示もないし、保証金が必要なわけでもない。紹介状とともに医師の問診をうけその承認が得られたら、簡単な記入手続きだけ。どうやら退院の日まで一円も払う必要がなさそうだし。もちろん身元は健康保険証などですべてわかりますが、病院経営がたいへんなのは、断固としての入院費の不払い(踏み倒し)があり得るからなんだな、と今日見舞いに来てくれたA氏の悪行を聞いて知った次第。





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△4つめだけはとても切実なかんじ

カーテン一枚だけで仕切られている空間にはプライバシーはまったくない生活です。女性だと、さすがに病室での「おなら」は我慢するのでしょうか? 男性部屋だとまったくそれはありません。これはなかなか新鮮で、おなら、いびきは言うに及ばず、看護士さんとの会話から、その人となりや病歴などはすべて筒抜けなのです。
大量に血便が出たと今日緊急入院してきた向かいのベッドの人は、シルバーセンターで自転車の片付けをする74才の方で、看護士さんに入院歴を聞かれ「12-13回救急車で運ばれてる」と自慢げに語っています。

「最後に、崇拝する宗教などはありますか?」と聞かれ、「うーん、おれは、ほら、あんまりそういうのはないんだよな」と質問の意図不明気味に答えていたおじいちゃんはなかなかかわいかった。

つまり相部屋というのは実に楽しいわけであります。

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入院するということ

日曜日の午後の病院というのは静まり返ったおばけやしきのようだった。
午後二時、港区にあるこの大病院に来たのは入院のためです。
入院というのはもちろん僕自身が患者本人を意味しています。

予定期間は二週間で病名は糖尿病。
正確にいうと、「最近血糖値がすごく高くてヤパイよ」ということだそうです。
糖尿は「病」とつくわりには痛みや自覚症状がない病気でして、人間ドックのたびにああだこあだと指摘されながらもそのままずっと放置してきたのであります。
そもそも痛みや自覚症状が無いからわざわざ医者にいかない。いや、医者側としてもこれという治療法などない、それが糖尿病のやっかいなところです。要するに生活改善しかない。
ま、僕の糖尿の原因は明らかで、不摂生とストレス。


痛みのない病気なんて利子のない日本育英会の奨学金や国の助成金、あるいは延滞金のないビデオレンタルのようなもの。返そうという気がおきるわけがない(笑) 脅されないと入院はおろか食生活を改善しようなどという気さえおきない。そもそも人間なんて、痛い、とか、とにかくなにか困らない期限を先送りにしてずるずると毎日を過ごす生き物なのです。

そしてある日怖い男の声で「レンタル料かなり滞ってますがどうしまひょ?」なんて取り立て電話がかかってくる。薄々わかっていたけどそのとき初めて「やばいぞ」となる。
そう、入院したということは、僕にもこの「怖い声の人」があらわれたという事です。

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僕にその怖い警告を発したのはF医師。F医師は中学高校時代の同級生です。
入院という言葉に「よしゃ」と同意したのは、ずるずるの毎日にピリオドを打ちたかったから。
どうせ入院するなら個室じゃなく相部屋がいいな、というのも、一度も入院したことがない者の好奇心からに他なりません。