猪瀬直樹さん
猪瀬直樹氏の「ミカドの肖像」を初めて読んだとき、ずしんというインパクトを後頭部に受けたような記憶がある。
「土地の神話」「欲望のメディア」と続けて読んで、僕の第一作になる「財閥銀行」(1993年/東京を舞台にしたシミュレーションゲーム)の副読本の参考にさせてもらった。
ただ参考にさせてもらうだけでは申し訳ないので表敬訪問し、そのまま副読本の監修もお願いした。
それ以来の関係だから、猪瀬氏とは16-17年の関係になる。「シーマン語録」の解説やアスキー版の「林檎の樹の下で」の解説で執筆いただいた。逆に猪瀬氏の連載にも何度か僕の名が登場したことがある。初めてお会いしたのがまだ20代だったので、僕のことを「斉藤青年」と呼ぶ癖が氏にはあって、「もう青年じゃないですよ、中年です、いい加減にしてください」と苦言したら、そのやりとりがそのまま文春の連載に載ってしまったこともある(笑)。
東京都の副知事になってからもこの不思議な関係は続いていて、時おり、雑談を肴に酒を飲む。氏の視点で見た都庁の内側というのがやけに面白くて、僕はいつも耳を傾けて爆笑してしまう。
今日聞いた爆笑話は、幹部会の会議弁当の後日談。詳細は割愛するが、「役所ってのはそういうありえないことが起きる場所だ」と、いつものべらんめえ口調で笑わしてくれる。
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僕の次作のテーマは、以前に一度取り組んで頓挫したままになっている「空港」であるが、氏の今の仕事のテーマも「空港」。
ずいぶんな年齢差だけれど、分野を超えて、立場を超えて、いちど、共作みたいなことができるといいな、思う今日この頃である。