僕が会社を脱サラしたとき、たしか31歳だったのだが、いうまでもなく、資金なんてろくになかった。
だから、最初はごく近しい友人の有限会社に、貯金をつぎ込んで増資をし株式会社とし、その半分の株主としてスタートした。
この会社はそもそも社長を含めて三人という会社で、僕が4人目の社員(正確には役員だが)ということになった。その会社の取締役として電子出版の新事業をするのが僕の独立というわけである。
そもそもたいした資本がなかい会社にわずかに増資したわけだが、この資本金ってのがまずは最初のくせものである。
自分で独立して会社を開業するのに、なぜ1000万円も必要なのだろうという? 有限会社だと300万。この二者のちかいはなにか? ハンバーガーとチーズバーガーのようなランクの違いだろうか?
独立して13年経過するが、その明確な回答は得られないまま、今年新法律が施行となり有限会社という存在が消滅した。300万円でも株式会社がつくれるようになったのである。
「けっきょくのところ、300万円で株式会社を作ってはならない理由はなんだったんだ!?」
税理士というのはこういった分野の専門家である。だからあたらしい法律のしくみ・ルールはあますところなく教えてくれるけれども、その意図というか意味までは教えてくれない。だから社長というのは、時間をかえけ、その意味を自分なりに体験し解釈してゆくことになる。
そう振り返ると、株式会社というのは、一人で独立する人向けにお勧めする形態ではない、といまは思えてならない。
「最低1000万円集まらないなら株式会社は向いてないよ、お客さん。お金がないならもっとちがうものにしておきな・・・」
お役所は法律という名で私たちにそういっていたのである。
その証拠に、同族会社(一人ないしはごく少数の株主によって所有されている会社)は普通よりも法人税が高い。
税金が高いというのは大雑把に言うと、国が、「あまりよろしくないよ」といっている意味だ。だから、少数で経営している会社はあまりよろしくない、という意味である。それを加味するとなおさら、株式会社の資本金が一千万という法律がきまったのは前述したような価値観があったのではないかと思うわけである。
ここのところのベンチャー促進の意味か、あるいは企業の意味合いが変わってきたせいか、その枠組みがだんだん変わった。最近では資本金が少なくても会社が作れるようになった。だたらなおさら、これまでの資本金って何だったんだ!?という問題に帰る。
そもそも資本金というのはさ、自分始めようとしている事業が軌道に乗るまでに必要な資金のことである。スタートするのにこれくらい無いとはじまらんぞ、というお金。
軌道にのるというのは、入金がはじまり、回転し始めることである。だから、もし皆さんがたとえば、作家として個人事務所を始めようとしているならば、正直1000万円の資本金なんて絶対にいらない。ワープロ、最初の原稿を書き上げるまでの交通費や調査費、カメラ、FAXぐらいのものだろう。1000万から比べると,屁というものでもない。
そうなると、1000万円なんていうあるいは300万円なんていう資金をわざわざ資金調達させていたことが「へんだ」という話になる。
で、たぶんですけど、この商法はそもそも、個人事務所を開業するための法律ではなかったのではないか、と考えるようになった。法律が意図していたのは、「そんなことは個人事業主としてでやりなさい、会社になどにせずにさ」とね。
つきりここでいう会社というのはさ、アイスクリーム工場を開設くとか、出版社をはじめるとか、とにかく一人ではできないことを資本という形であつめてやることである、という意味なのである。パソコン一台ではじめるようなことではない。
たしかに個人でやるだけなら金をかけてまでわざわざ「会社」なんて名乗る必要はない。
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