映画「セブン」はどこかの雑誌の取材でベスト10にいれたほど好きだ。
僕のすきなものには、どうやら共通点がある。
それを無理に言葉にするならば、「対極の同居」ってところだろうか。
ようするに、ありえないほど反対側にあるものが、実はおなじところにある、という風景が好きなんだ。
セブンの題材となる崇高なキリスト教世界の教義と、連続殺人の猟奇性。この映画は神学の美とエログロをあますところなく同居させた作品である。
手かがりを求めて刑事がおとずれた図書館のシーンではG線上のアリアが流れる。テレビドラマで、ナルシストが反抗を犯したあとに流れるバロック音楽、といったやすっぽい演出ではなくて、実に崇高に、うつくしく、それは響いた。この二者の違いって、作り手の知識の違いではないかな、と思う。
そう、この映画のサウンドトラックを聞くとわかるのだが、使われている曲はすべて「7」に関係がある曲ばかり。G線上もそのひとつである。すべてか、エッシャーのだまし絵のように、バズルのピースになっているような作り方。
バッハの音楽はメタ数学的ということがゲーテル・エッシャー・バッハにくわしく書かれている。著者のダグラス・ホフスタッターは、この本でピューリッツァ賞をたしか受賞した、はずだ。
20年以上前、学生時代に深夜のパーで、坂本龍一さんに、同著者の「マインズ・アイ」という本をすすめられたことがある。音楽家というのは数学にも興味をもつものなんだな、と感心したことを記憶している。
数学と音楽、美とグロテスク、精神世界と肉欲煩悩、いろいろな矛盾がひとつのキーワードで結ばれたような、そんな世界に、とても惹かれるのである。
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