斉藤由多加 (Yoot Saito)
さいとうゆたか
 

東京生まれ。ゲームクリエーター/株式会社ビバリウム。ゲーム作品の代表作は「シーマン~禁断のペット」「大玉」「ザ・タワー」など。ゲーム作品の受賞歴としては、文化庁メディア芸術祭で特別賞、米国ソフトウェア出版協会でCodies賞、Game Developers' Awardsなど。 TheTowerDS が08年6月26日に発売予定 
 使用カメラ/ライカM8 愛用レンズNoktilux 50mm F1.2など

株式会社ビバリウムのサイトはすこしリニュアルしてwww.vivarium.jpに移動しました。
フォトアルバム

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体験値

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写真は、自宅の洗面所の壁にあるタオル掛けである。みてわかる通り、長年の使用で傾いてきている。この傾き具合からわかることは、壁からもげ落ちるのも時間の問題、ということ。
この事実に、家族は全員気付いている。

だが、誰も、何か対策をねろうとは言い出さない。なんとなくわかっていながら毎日はそのまますぎてゆく。

人間の日常ってのはそういうものだ。
人間は、ゆっくりと、しかし確実にくるものに対しては、実に無頓着なものだから。

ことその顛末が未体験領域にあることがらに対しては、たとえばそれは生活習慣病であったり、喫煙のようにやがては死と関係するものであったり、あるいは環境破壊であったりだが、要するに、気の長い因果関係の先のことに対しては、その無頓着ぶりは顕著である。

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「頭でわかっている」という言葉がある。要するに痛みを伴った体験をしないままわかった気になっているという慣用句で、実のところわかっていないという意味である。

冒頭の写真の、立て付け型のタオル掛けが壁からもげ落ちると、これはこれでかなり厄介だろう。修復は壁ごとになるからだ。それは頭ではなんとなくわかっているのだが、まったく僕たちにリアリティーがない。その証拠に、この状況に対して家族の口から話が出たことすら、ない。

そしておそらく、「崩壊の瞬間」は、ある日突然にくる、のだろう。そして僕の場合これがタオル掛けにかぎった話しでなく、血糖値の上昇だったり、喫煙量による咽頭の不調だったり、という話しだったりする。

いまだったら間に合うのかもしれないし、もう手遅れなのかもしれない。それがわからないから、その瞬間を迎えるまで、なんとなく放置されたままになっている・・。危機感のリアリティーとはそういうものだ。

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つい先頃、アメリカの土地バブルが崩壊した。
ここ数年間、アメリカの地価は上昇しまくっていただけに、日本人は「ほかみたことか」と思っている。多くの日本人は、痛みとしてバブル体験を覚えているから。
だから日本の株価もぱっとしない。ちょっとあがるとすぐ「利確売り」となるからだ。

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じゃバブルを経験していない日本人の世代はどうか、となると、話はまったく別となる。世代がいれ代わると、「バブル体験がある日本人」とて、同じ過ちを繰り返すことになるだろう。体験しているのとしていないのでは、その危機感に大きな違いがある。頭でわかっている」だけなのは、実のところわかっていないのと等価なのだから・・。

だから因果関係を体感で知っている、というのは言い換えるとつまり「経験豊富」という言葉になるわけで、それはそれで財産でもある。

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さて、戦争体験はどうか、となる。
日本から戦争体験者は姿を消しつつある。世界唯一の被爆国である日本は、内閣総理大臣をはじめ、みな「あたまでわかっている」のだが、じゃ果たして本当に痛みとしてわかっているのかとなると。かなりあやしい。

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知識は人から人へとコピーできる。しかしどんなにメディアが発達しても感情や痛みや体験値はコピーできない。だから、感情移入体験を可能にするモノ(=エンターテイメント作品)は、不況でもなかなかなくならないのだと思う

余計なものをけずって、ものごとの因果関係をストレートに気付かせる、それがシミュレーションゲームをつくる僕のモチベーションなわけだが・・・そういう僕も、自身は元来の無頓着から脱することはできていない。自分の体調不良から目を背けたまま日々を送っているのだから。

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大人の夏休み

晴天ではじまった三連休。うるさいほどの蝉の声とこの暑さは、まるで゜夏休み」のようだ。
あ、そうだ、学生たちは今日あたりから夏休みなのだった。この夏休み、という言葉がもつドキドキ感。男の子にとってはたまらない響きがある。

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僕は、子供のころからこの「夏休み」という言葉が大好きで、それは社会人になったいまでもかわらない。ばかみたいに長い夏休みは冒険の季節であり、あるいは体験の宝庫だった。それらの思い出をいっぱい携えて9月に教室にもどる時には、一皮むけた自分がいた。

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それにしてもなぜ「夏休み」なんてものがあるのか、その理由などぜんぜんわからずにいた。大人たちは会社にいくのに、学生は当たり前のように「夏だから学校は休み」と思いこんでいた。 その理由はいまだに知らないままだ。

「なぜ夏は学校が休みなの?」
この質問に明快に答えられる大人はどれくらいいるのだろう?進入学に備える春休み、正月を過ごす冬休み、はわかる。でも、一か月以上も休みがある「夏休み」は、学校にクーラーがない時代の遺物なのかな?

でもこの長期の休みのおかげで僕たちは学校では体験できない事件をいくつも経験する。そしてその途中にかならず「お祭り」ってのがあって、そこで同級生たちの顔を見ることができる。ちょっと涼しい風が吹くことに気づき、長い夏休みのおわりが近付いていることを感じる。なんとなく切ない気持ちになる・・。

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今日近所の路上を歩いていたら「今年の納涼まつりはどうするの?」と十番商店街の出店主任をしているK文堂のご主人に聞かれた。毎年出店していたけれど、今年は申し込みに行かなかったことを知ってのことだろう。
「今年はちょっとおやすみしようかと・・」
そう答えながら、はやくも夏休みのおわりの切なさを感じてしまった。
モデルさんやホステスさんや芸能人やホスト・・・、麻布十番まつりは、そういう都会の大人たちが一斉に集まる、ちょっとかわった祭りだ。

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「早く夏が来ないかな・・・」
子供のころから夏休みにあこがれている僕は、日々そう思って生きているんだけれど、いつのまにか秋が近付いているということか。

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絶版書籍のプレミア価格に関する著者の心象

今日、iPhoneの件で、来客があった。
会議室にある古いマック関連のものに関していろいろと感動してくれたので、むかしのアップルやマックに関する著書を差し上げようとしたら、もう在庫がないではないか。

著者に著書をもらうことはうれしいものだ。だから僕も、興味をもっていただく方にはあげられるようにと、定期的に出版社から割引購入して会社においてある。なものだから、いざあげようとして在庫がないのにはちょっと焦った。

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勝新太郎さんに関する本を漁っていたら、山城新伍氏の著書が評判がいい。amazonで購入してから気づいたのだが、この本、新古でなんと6000円もしていた。なかなかいい本なのだが、プレミアつきの本というのは読んでいてなんとも気を使ってしまう。著者の山城氏はさぞやよろこんでいるにちがいない、なんて漠然と考えつつ・・。

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で、上記の自著をamazonで検索したら、4000円以上もしていることが判明!!。

今日、はじめて山城さんの気持ちがわかったような気がする。つまり、これって、あまりうれしくないのである・・・。

やっぱ本もソフトも、適価で、これつまり「現役で」、市中にいててほしい・・・これが素直な気持ち。たくさんの人に読んでもらいたいからね。

自分の著書やソフトなんてものはさ、値下がりもせず、かといってプレミアもつかず、程よい値段で売っていてくれるのが、いちばんありがたいということを発見した。どちらもむずかしいことなのだけれど・・・・。

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「臭イス」の運命

Bo Conceptのセールで、たしか7-8万円はしたと思う。
それはちょうど「2001年宇宙の旅」あたりの待合室のシーンで出てきそうなちょっとレトロモダンなチェア。この北欧製のチェアを一目で気に入り、僕はそそくさと購入したのであった。

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40代の男の楽しみに「家具」というのがある。このチェアは、だが人間のご主人様が愛用し始める前に、メス猫のデイジーに目をつけられた。最初はちょっとした好奇心で用を足した程度のものだったのだろう。猫のおしっこは、だがかなりの臭いを発するので(あるいは人間のおしっこもそうなのかもしれないが)、その臭いに気づいた家族たちは人間のご主人様が帰宅する前にあわててアルコールとファブリーズで消臭したそうだ。

しかし、一度自分の臭いがついた場所というのは、動物にとっては生理現象の目印である。来る日も来る日も、デイジーはここで用を足したおかけで、この北欧製チェアはこのエチオピア原産の猫のトイレとなり、美しい姿とはうらはらの悪臭を帯び始め、そしていつしか娘から「臭イス」と呼ばれるようになった。

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そしていよいよ暑い夏が来た。
気温の上昇とともに、この「臭イス」が放つ悪臭も本格的に殺気立ちはじめ、我が家で疎まれる存在になっていた。そして先日ついに家族からついに、「廃棄を検討したい」という案が出たのである。

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だが僕はまだ迷っている。
この臭イスを廃棄してしまったら、新たに別の家具が犠牲になるのではないか?と・・・。そう、「臭いものに蓋」という慣用句があるが、我が家はこの「臭イス」とどう共存共栄するか、それが試されているのではないか?そんな気がしてならない。

この北欧家具は今年1年、我が家に居座ることができるのか・・・それが僕のこの夏の最大の関心事である。

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iPhone by ソフトバンク入手方法の考察速報

今朝これから並ぶのであれば地味な店舗が以外に安全である、という話。

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そもそも7月に発売などと電撃発表で始まったiPhoneフィーバー。デベロッパーでもSB関連会社でも。あるいは多少のコネがあっても手に入らない、という状況。ソフトを作っている開発会社としても「だったら並ぶしかない」、ということになる。

ということで、01時amから都内を徘徊し、6時間ほど並んで若手とバトンタッチ。その途中に得た情報をレポートすると以下のようなものになる。

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浜松町店のように、うっかり(?)店頭の人が予約注文をとってしまったせいで並ぶ意味のなくなってい店もあれば(そして誰も並んでいないそうだ)、千葉八千代台店のように、ただ誰も並んでいない(4:00AM時点)ので並べば確実に買える、という店もある。

六本木交差点にある六本木店は、思ったより人は少ないし、新橋店にいたっては、徹夜で並ぶ必要などなかった、ちょうど都会の真空地帯(9台に対して6人の行列 7:30AM時点)というところもある。

だから、なにも米国大統領が来たかのような騒ぎのフラグシップ店の表参道店ばかりを目指す必要はない。というよりここは大変である。だいだい、購入後の手続きの時間を考えると、発売時間と入手時間のギャップは人数に比例する。だったら在庫も少ないが行列も小さい、という地味な店のほうが狙い目、ということになる。ま、その一体感やカウントダウンの楽しみもあるけれど・・・・写真をみればわかるけれど、ちょっとしんどいよと思う。(写真の報道陣のカメラの先にはユニフォーム姿の孫さんがいる)

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△表参道店 7時15分am 

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△六本木店 7時am ここ、意外に狙い目かも

一緒に並んでいた情報通の方たちの情報によれば、ビック有楽町店は、整理券を10時に配布したあともそのまま12時までそこに並んでいないと棄権になってしまうそうだ。

そもそもソフトバンク直営店とフランチャイズ系の区別は見た目では分からないが、その対応の差は歴然としていて、直営店は厳密、そうでない店はけっこういい加減という状況、そこに大規模量販店が混ざってきているから、購入の難易度はバラバラである。気をつけるべきは、「整理券を受け取った後」の段取り、である。「あとは何度でも」の店と「何時に来い」の店、そして「そのままそこにいろ」の三種類がある。

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△新橋店5時10分am 

要するに「何台在庫がある」とか「整理券を受け取ったあとはどうなる」を明示しないのであれば、小さい店のほうが結論もはやい、というわけだ。

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△前日深夜であってもこういうインフォメーションをする店はいい。フランチャイズだからできるのかな?在庫数以上に無用に並ぶ無駄がないもん。

しかし、iPhone、「宣伝なし」でこの認知度はすごいなぁ。

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P.S

ところで、このiPhone、本当に「手に入らない」のか!?!?
土曜日あたりの店頭が楽しみ。