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極みの品々

ルーカスフィルムを訪れると、まずびっくりするのは、"失われた聖杯"だとか"ライトセーバー"だとかが、博物館のように重々しくライフアップされ陳列されていること。

「あ、これ本物だ!!!」と叫んでから気がつく。
「・・小道具だ。」と。

本物の聖杯もライトセーバーもありはしないから、ここにあるものが本物なのだ。
オリジナルなんてのは、そういう意気込みでないとつくれない。

かつて帝国ホテルの一階の古美術屋に安土桃山の見事な屏風があった。
値段をみたら数百万だった。

だったらいつか、本物を作ってしまえ、という企画をファミ通さんとのタイアップで実現させた結果が、たとえば、これです。

任天堂さんのご理解とたくさんの職人さんの手を経てできた究極。
世界で3つしかない、この「極みもの」、今週末あたりから、申し込み開始のはずです。

ご興味がありましたら、
http://www.odama.jp/goods/making/index.html
まで。

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おもに女性のユーザーの方へ

発売2日目を経過した今日15日早朝の時点で、「大玉」をプレイした人の感想などをここに書いておこう。

私に帰ってくる多い意見のベスト3をまとめると

1..最初の7-8分間くらい、わけがわからない(混乱)
2.最初のステージの4面あたりでつまる(難易度)
3.「おせ」「さがれ」などの認識がままならない(認識)

といったところだろうか。
攻略法を紹介したいのだが、大玉には、「答え」、というものがあまり存在しない。だから、雑誌やネットで情報を探したりしてもはがゆいかもしれないね。映像の攻略法が出るといいのだが・・。
なんで、ゲームに不慣れな女性の方むけに書くと、こんな感じかな・・。

【傾向と対策】

●1について
ご安心ください。1は想定範囲です。まずは、なにがなんだかわからないでしょうが、7-8分だけプレイしてみてください。
このゲームの第一面は完全な練習画面でして、基本的なルールをマスターしてもらうためにあると思ってください。
このゲーム、ルールは簡単なんですが、声とフリッパーを使うので、最初はなにをどうするといいのか、やってみないとわからないのです。「何がどうなるからゲーム」なのか、はマニュアルではそうわからない。
でも1ステージをクリアしたときに、「あ、そういうことか、はいはい」とわかってくるものがあるでしょ?
そ、それが大玉の遊び方なんです。

●2について
最初のステージの4面は、難易度が高いといわれています。
ボスキャラが登場する面です。
この面には、それまでの面でなるだけ兵をたくさん連れて望んでください。
それから、早いうちに、敵のフリッパーに自分の兵をあつめて、占拠してください。

●3について
実は「おせおせ」「さがれさがれ」などとコマンドは二回いう仕様になっているんです。(画面をよくみてね)
一回でも認識はするんですが、人によって話し方というのは違うので、二回いうとほぼ確実に認識するように作られているんです。

それ以外のヒントもここで。

信頼度を上げるには追加で兵を出陣させよう。

おにぎりに「あつまれ」といってみよう

では。

P.S

比屋根君、どこまでクリアできた??

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「Yes! Yes!」という声

アメリカ版がこんな感じでとどきました。

アメリカ版は、あまりやったことがない。
資料を見ていたら、画像ファイルにこんなシーンがあった。

下のテロップには「Yes! Yes!」とあるぞ。

実はこれ、大滝さんの日本語を翻訳して表示している字幕なのですけどね。

なんか、すごいなぁ。

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「秀爺の書」なる無料の書籍

ゲームが発売直前になるといろいろな印刷物が届くようになる。
「あ、もっとこうすればよかった」「説明がたりなかった」などと後悔するのであるが、それでも(たぶん)仕事をしていてよかったな、と思う瞬間でもある。

先週末に届いたのが、「秀爺の書」なる書籍である。
ゲームを買うとタダでもらえる、というもので、けっこう中身が濃い。
というか、みながんばったねぇ、忙しい中。

この小書籍デザインで、本書のデザイナーである優秀で若きIクンに何度も手を入れてもらったのは、「文字の大きさ」である。
「もっと字を大きくしてよ」
「これ以上ですか?」
「そう!」
「これでも十分読めますよ」
「読める、読めないではなくてね・・」
3回ほどそんなやり取りをした。

たぶんIクンは、僕が老眼だから、字を大きめに、と主張していたとおもっていたのではないだろうか?
だったらちがう、って。笑
こういうことです。(この冊子でいちばん気に入っているのはこの左のページ)
文字の大きさってのは、強調したい部分の程度を現すと思うのよ。
書いてあればいいということではなく、ね。

でもいいぞ、この本、タダにしては!!

なにせ全マップが攻略入りで載っているなんて前代未聞だよ。
情報を記録できる攻略ノートまでついてますから。

ということで、「欲しい」という人にはどーんとタダであげちゃいます。
欲しい人は、

こちら、のサイトで。(笑)

毎度ありー。

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面倒くさいの意味

「今年はE3には来ますか?スピーカーとして参加しませんか?」
海外からのうれしいメールに、
「ごめんなさい、いけません。来年また誘ってください」
と返事した。残念だった。

佳境を迎えているスタッフとすこしでも決めなければならないことが山積みの中でアップアップしている。アップアップの割には、一刻もはやく仕事を切り上げたいと、思っている自分がいる。
切り上げたわりには行動半径がせまい。そのせいで脳が固まってきているような気がする。

どうしたことだろう?
携帯とメールですませようと横着になっているのだろうか?
外に出て仕事をすると、すごく仕事をかたづけた気になるのはなぜだろう?

ここのところ大好きな「書くこと」すらスピードが落ちてきている。
ほぼ日の原稿も滞り気味ですし。
本当は、毎日書いていたいのですが。
たくさんの人が読む原稿たがら、敷居が高くなって「面倒くさい」になっているのではないだろうか?

24(Twenty Four)のテロ対策チームのジャック・バウアーは、あれだけ先端IT武装してなんであんなに移動したのだろ?今の僕だったらメールで済ませようとしてしまうかもしれない。

「斉藤君、40代のいちばんの大敵は何か知ってるか?」
朝日新聞のデスクの人が突然こんなことをいいだした。
「「面倒くさい」だよ。
この言葉が人間を堕落させるんだ」
なるほど。すごく思い当たります、と思った。

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ヨーロッパ版が届いた!!

会社にヨーロッパ版の製品版が届いた。

パッケージは日本のものとぜんせん異なるが、マニュアルは観音開き仕様までもが日本語版を尊重してくれているのでTクンもSクンもうれしいに違いない。

右の水墨画は、唐の時代の蓬莱山伝説を描いたもの。龍が握っているのが「大玉」といわれる。左は、合戦で景虎が鳴らす陣太鼓を描いたものといわれる。

観音扉を開くと、本丸までの道のりが描かれている。山口晃さんに描いていただいたものだ。

これらヨーロッパ版は横書きですが、実は日本語版に封入される大玉のマニュアルは「縦書き」である。
任天堂始まって以来初の仕様だそうだ。
これは、「初モノ」を狙いたくてやったなどという不純な動機で作られたわけではない。世界観も原稿も最初から縦書きを前提に書いたので自然な成り行きだった。

観音開きの案は製造コストを理由に一度は却下されたが、そのままデザインをTクン(別のコーナーに登場いただいてます)に進めてもらい、ラフができたところで再度任天さんに見てもらった。案の定「おもしろいですね、これ」と担当のKクンから柔軟な意見が帰ってきたので実現することができた。もちろんこんな仕様も「初モノ」である。「いいものはいい」といってもらえる信頼関係がすでにできあがりつつあったのだろうね。そのおかげでこのプロジェクトはずいぶんと助けられたと思う。

といったように大玉プロジェクトは、いろいろな「初」がある。
でも、くれぐれも誤解がないように。ただ奇をてらってやっきたわけではない。そんなものがすいすいと通るほど任天堂は甘くはない。ここら辺は、僕の場合誤解されやすいところです。任天さんに限らず社会というのは、味方をつくらないと物事は決して進まないものだ。そのためには
明確な理由説明と、
それに対する情熱と、
そして共有された目標、

この三つがないと味方というものはできないし、つまり企画は進んでいかない。だから大玉プロジェクトの「初」はスタッフ合意の上での「初」である。だから意味が大きい。そしてうれしい。

「大玉」というのは、実のところ「バカゲー」である(笑)。企画段階から全関係者にとってそれは明らかであった。大玉という作品の完成度は笑いの量で測ってきた。
ゲーテという雑誌にすでに公開されているのでカミングアウトしてしまうが、ラスト近くに任天堂の本社ビルを舞台にする隠しマップがある。そこから飛び出してくる仕事着姿の社員を大玉で拿捕し戦場に駆出すマップである。画面内に任天堂本社がでてくるゲームも初であろう。よくもこんなとんでもない作品にーOK出してくれたな、と思うと感慨深い。
ばかばかしいゲームを、しかもくそまじめに演出しよう、というセンスに任天堂さんの若手の社員が一緒になって共鳴してくれたことに対して、とても感謝している。

そんな思いが象徴されているのが、このマニュアルの観音開きである。だからなんだかとてもうれしいのである。


ティザーCM

今日から、大玉のCMがはじまった。
ティザーとよばれる第一弾は、テーマ曲のCold and Boldと、シルエット(僕はシルエットがすきなんだ)だけのものだ。

どの局の何時にオンエアされるのかわからないけど、

http://www.odama.jp/download/index.html

で見れます。

おたのしみに。

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グッズをつくろう!!

ほぼ日の連載にこちらのブログのリンクを掲載したせいで、やけにアクセス数が伸びたです・・。

さて、大玉のプロモーションをかねて、グッズをつくろうという案が以前より関係者内であるのですが、いままだ迷っておりまして。そんなこんなの先週、ずっと以前にサンプル作成をお願いしていた、漆(うるし)塗りのすずり箱、が京都の老舗さんより出来上がってまいりました。筆やすずりをここに入れて、これはという人のために手紙をしたためる・・。そんな時のためのすずり箱。漆のにおいが(正確にいうと"かしゅう"といいます)ぷんぷんと匂ってくるのですが写真ではぜんぜんわからないよね。

任天道ロゴ版と、大玉ロゴ版、を、制法別にお願いしていたのですが、まず第一弾で、出来上がってきたのが下のようなサンプルです。

年齢のせいか、はたまた時代がそうなのか、とにかく最近「和」の匠に魅せられている自分がおります。和のグッズを、なもんだから作って販売などしたいな、という希望をもっておりますが、なにせ一個一個が高いのと、数がたくさん作れない。だからいまだに迷っております。

こんなグッズ、欲しい、というご意見がありましたら参考にしたいので、どうぞお寄せくだされ。

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かっこつけるわけじゃないが

明日、自費で京都任天堂さんの営業会議にご挨拶にいってきます。

シーマンのときにもセガさんの販社を訪れてに同じことをしたのだけどさ、新作出すときは、頭下げて「このソフトをつくった者ですが、ひとつよろしくお願いします」と顔見せにいくのさ。スーツ着て。

「本当にお見えになるんですか?」と驚いていたのは任天堂のYさん。
「当たり前じゃないですか、人生かけてんだから!」
「ま、ま、そりゃそうでしょうけど、こんなこと初めての事なんで・・」
「僕は毎回やってますよ」
なかば押しかけにも似た挨拶である。

好きなものを作ろうとすると、いやというほど、やりたくないような仕事をしなければならないです。僕の毎日の9割5分はどうてもいいようなことに費やされている。本当に自分の手を使ってやれたらいいだろうな、と思う面白そうな仕事は残念なことにたいがい部下に振ることになる。
「君たちにあって僕にないもの、って何だと思う?  一つのことに集中できる『時間』、だよ。うらやましいとさえ思うことがある」 これ、最近の僕の口ぐせです。

資金繰りだとか、借り入れだとか、社長というのはていのいい雑用だ。うんざりするような仕事に一日の8割をとられ、のこりの貴重な2割を、社外からの電話対応やら、支払い決裁やら、なんやかんやの相談にとられ、あとは帰宅後の自分の時間をつかってみっちり朝まで仕事。これじゃ体もこわすというものだ。それでも続けているのは、やっぱ大手企業ではできない企画を実現できるのが中小スタジオの存在価値だから、と思っている。

ゲームクリエーターを目指す若者が依然として多い。素人と限るつもりはない。業界人にもすごく多いんだもん。
そういう人とあってて感じる絶望感に似た感覚がひとつあってさ。

「僕はお金には興味ないんだよね」
とか
「作りたいものをおもいきり作らせてくれる環境があればあっといわせてみせる」
とか涼しげにいうのがかっこいい、という風潮ね。
誰が作ったんだろうかね、こういうう風潮。僕ら裏方なんだぞ。

「お金に興味がない」というのは正しくないよ。「使うお金は心配したくない」でしょ? 懐に入ってくるお金に興味ない人なんていないんだから。その影には金に手を焼く人が必要なんですよ。会社のお金なんてほっとけばどんどんなくなるんだから。僕はお金に無関心ではいられない。もっとほしい、とはっきりいえる。できることならもっともっと制作費をかけたいもん。でも家賃とか給料とか光熱費だとか、そのつじつまを合わせなきゃならないから、大変なのだよ。だから社長は偉いのだよ。『社長だから偉い』んじゃない、『だから社長はえらい』のだ。

フランシス・F・コッポラの奥さんのエレノアが書いた『ノーツ』という手記を22年前に読んだ。ここには、コッポラが『地獄の黙示録』の撮影が泥沼化する様が描かれている。予算も時間も尽き、製作中止。クレジットカードも止められて、ゴッドファーザー1・2で獲ったオスカー像を二回の書斎の窓から次々とプールサイドに投げつける半狂乱のコッポラの姿が、奥さんの目から生々しく書かれている。
でもそういう執念があるから、彼の作品はどれも卓越したものがある。おなじ駄作であっても、ハリウッドのそれとはぜんぜん異なる殺気めいた怨念が漂っている。

『斉藤マジックを間近で見たい』
そういって大玉に合流した若きプランナーがいた。
『マジック??』
そんな器用なことは私にはできないですよ。
ヒットさせたければ、スーツを着て自費で営業流通の方々に挨拶に行きましょうよ、日本のクリエーターのみなさん!!

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ファミ通の巻頭で

昨日発売されたファミ通の巻頭に大玉が大きく取り上げられたです。大玉は日本での初パブリシティー。でも宮本さん褒めすぎですね、僕のこと。僕はそんなたいしたクリエーターではないです。大玉もどちらかというと難航つづきのプロジェクトでしたから。美談とは程遠いし。ま、ゲームとしてはたしかに傑作に近い出来なんですけどね。最初の打ち上げ花火みたいなものですからね。これから宣伝がどんどんはじまる予告ということで。

実は、直前までは宮本さんと僕の対談という企画で進んでいたんですね。けど宮本さんというのはもはや業界の「象徴」みたいな人だから、なんとも恥ずかしくなって、直前でごめんなさいして企画変更してもらいました。だから伏見稲荷で撮影された写真には僕も一緒に写ってんですけどね。語りは宮本さん一人にお願いしてしまいました。

宮本さんって、海外では日本とは比較にならないほどヒーローなんですよ。だって路上を歩いていてもサインくださいっていわれる人ですから。(E3の時とかはとくにすごいよ・・)たぶん、あの子供のような顔にゼルダの伝説のリンクがだぶっているのではないかな、と推測しています。それに比べると、僕のふてぶてしい顔つきはぜんぜんダメですよ。悪役顔だもん。あ、そうか、シーマンだから僕もだぶってて逆にいいのかも!?

いまヨーロッパ版の最終段階なんですけど、日本の発売が一番最後になっちゃったから去年の夏過ぎに入れた日本版のマスター、このあともういちど手を入れることにしまして・・。ですので岡安さんはまだがんばってくれているわけです。感謝を通りこえて申し訳ない気持ちです。僕は本当にわがままな人間です・・。